2012/05/20

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九月の残暑も末の生温い午後のことであった
閑散とした住宅街には 木なども生えていたりして その木の隙間からさしこむ日差しがわたしにやさしい
赤色灯に照らされているかのようなオレンジ色を帯びた町並みにわたしときみだけがあった
水滴をまとったラムネの瓶はまるで真夏のそれである   
僕の半分は”生”でできていて  もう半分が”死”でできている  もう少しひも解けば、その"生"の半分はこんな真昼のなんともない風景のフィルムのような極々変わりない繰り返しからできていて   決して一緒になれない僕の半分と半分がお互いを求めているから  僕の”生”がいまもこうして持続しつづけていられるんだと思うんだ   ラムネが冷たいなぁ、なんて考えている今だって明日のもしもの死のヴィジョンが頭の片隅を魅了している   きみは本当にばかだなぁ   ねえ、ほんとうにばかだよ
きみがそんなことをいう
それはまるで悪魔に見透かされているかのようだった



毎日グーグルアースできみの家までの道を歩く   今日は記念すべき1000回目の訪問   それは決して作業ではなく、自然と体がなにかをつなぎとめようとして行われる儀式のようなものである
実際にきみの家にいったことなど片手すらあまる程であるのに   わたしはきみの家までの道を覚えようなどとはせずともに完璧に覚えている   もちろんきみはそんな事情は知りもしない
そんな儀式にこめられた淡い思いも   夏のにおいとともに終わりをむかえる
きみは白いカッターシャツに白い自転車をおし   そのハレーションでわたしの目をくらませるが   すべておわってしまうのだからそんなことも もうこれで最後なのだ 
"きみ"は じゃあここで といい  ”わたし”は手をふって見送った 
それがわたしたちの最期である



夢の中でさえ きみにばかにされることだけは変わりない  見返してやりたい気にもなれば、その安定感に安心すら得る
安心が得たかった   つかの間のもので構わない  わたしは必死に"ばか"を装う
それを繰り返すうちにわたしは"ばか"そのものになる  "ばか"を真似るだけでなく"本物のばか"になってしまうのだ  なぜならば本物の天才であるからだ
きみは知っていただろうか?
わたしが本物の天才であったこと  あの別れがわたしたちの最期になってしまうこと  




なぜならここは夢の島
人の弱い心につけこむ夢の島だよ


2012/05/18

okujou idol



父の家から持ってきた枕は よその家のにおいがした
いつもとちがう灯りの色が    わたしがさも よそ者であるかのような感覚に拍車をかける
十六年ぶりにかえってきた父に気の利いた言葉をかけることもできず    わたしは画面をひたすらに見つめていた